■ヒイラギ ’香姫’ 

 

<動画内容のテキスト>

 

今回の動画はヒイラギの’香姫’です。

 

ヒイラギといえば、今はまずやらないので知らない世代の方も多いと思いますが、私の子供の頃はまだ節分の行事としてイワシの頭と共に家の外に吊るしてた時期がありました。

 

この樹はモクセイ科モクセイ属の’香姫’という品種です。葉は姫ヒイラギよりももっと小さく、少し厚みと柔軟性がある印象です。

11月になると沢山の白い花を咲かせますが、その香りがとても濃くて、ひと鉢あるとそれだけでよく香ります。

 

この樹を手にして何か話す時はいつも口にしてしまうのですが、数年前に亡くなった、私の盆栽会の先輩の柴崎さんて方が11月の例会でこの香姫をよく飾っていたんです。

あまり口数の多い方ではなかったんですけど、私にとっては沢山の印象深い姿を残した学ぶべき先輩です。

 

柴崎さんは勉強会会場の隅にたくさん花をつけたこの樹を飾って、奥さんが、「自分の盆栽には決して良い顔をしないのに、この樹のこの花だけは喜んでくれる」と話していました。

なんでしょうね、この気持ち。

 

そういうわけで、私はこの香姫が咲くとその柴崎さんを思い出してしまうんです。

 

この樹を入れてある鉢はその柴崎さんが作ったもので、おそらく一蒼さんに焼いてもらったものだと思います。

落款は輝くの「輝」という文字です。

 

柴崎さんは鉢作りも好きで沢山の鉢を削り出しては焼いてもらい、主にご自分で使っていました。

その話がまたしょうもないんです。

 

柴崎さんの話によると鉢を削り出すのは主に冬なんですが、コタツに仰向けで寝そべって、胸の上に新聞紙をひいて、寝たまま削り出すと言うんです。

やったことがある方なら、そんなやり方をすればあちこちに粘土のカスが転がるとわかりますよね。

同居の家族だったら怒りますよ。

 

それで、他に誰も説明する人がいないと思うのでひとつ説明しておくと、この方は樹形を作ることよりも花実を成らすことが好きで、そういった樹を飾る時に少しでも鉢が安定しやすいように足を付けない場合が多いんです。

 

亡くなってからはこの方の鉢も盆栽大野さんを経由してたくさん出ていきましたので、もしも「輝」落款の鉢を手にしたら、そんなエピソードも思い出してくれると嬉しいです。

 

それで、話を香姫に戻しましょう。

以前は盆栽屋さんでの扱いは見掛けませんでしたが、最近は挿し木素材を見掛けることも多くなりました。

私のサイズで話をすると、挿し木もよく着き、小さくてもよく花をつける、とても良い樹種ではあるんですが、丈夫さに不安があるというか、あまり小さいと枯らしやすいところもなくはないという、そんな印象なので、肥料はしっかり与えておいたほうが良いと思います。

 

こういう場合というのは、挿し木でよく増える樹種なので、大きめのポット苗をひとつ持っておいて、普段からそれを剪定して、挿し木すればある程度骨のできている素材になり得るものを作っておくのが良いと思います。

 

というわけで、今回は香姫の豆盆栽についての独り言でした。

ありがとうございました。

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