■盆栽鉢 木黄(横山瞳)

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 木黄さんの鉢で、白泥に呉須でカニが描かれ、透明釉なし、というちょっと珍しいもの。私の盆栽の先生土屋さんが長く使っていたものを譲っていただいたので、半端なく時代がのっています。

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 私たち日本小品盆栽協会東京支部からは多くの鉢作家が出ました。中村是好さんの絵付け鉢もありますし、夢陶さん(篠宮家造)、佐野大助さんなどはかなり古くからの会員です。私が鉢作りの基礎を教わったのは一蒼さん(宗像一雄)。私の盆栽の先生の土屋さんも「啄柿(たくし)」という主に染付鉢で知られる作家です。また、会員ではありませんが、陶芸家の辻輝子さんなども是好さんとの交流から盆栽鉢を作ったという意味ではうちの会ゆかりの作家さんと言えると思います。

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 皆さん口をそろえて言うには、昔は小さな鉢なんてなかなか売ってなかった、ということです。そこで愛好家仲間の中から鉢作りを始める人間が現れ、仲間に鉢を売る者、鉢の作り方を仲間に教える者、そういった文化が根付いていったようです。

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 木黄さん(横山瞳)もうちの会の方です。木黄さんの鉢というと墨はじきの鉢がすぐ取り上げられますが、私が見た中で素晴らしいと感じたものは丁寧に削られた平行四辺形の浅鉢だったり、こういった素朴な意匠のものだったり、一般的なイメージとはちょっと違ったものかも知れません。

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 この鉢などは「手抜きかよ」と言えてしまう作りではありますが笑、白泥に呉須絵の焼き締めという形態に古さという要素が乗っかって、そこが逆にサビを利かしている魅力になっています。そう考えると、ここまで時代がつくほど使い倒した土屋さんとのコラボにも思えてきますね。

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 白泥にカニの絵がありますので、やはり夏の飾りに映えると思います。そして焼き締めだからといって松柏にこだわらず、夏飾りで活躍する雑木類を入れて楽しんでいます。

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 こういう小汚い鉢を格好良く使える盆栽人なりたい。