■ツクバネウツギ Abelia
正確にはハナゾノツクバネウツギというらしいです。ツクバネは衝羽根で萼を羽根つきの羽根に見立てたわけですが、この樹はこの萼の部分が赤く色付いて長く残るところが盆栽樹種として、主に東京の豆盆栽の世界だけだと思いますが、好まれています。
私なども東京の豆盆栽の世界では良きに悪しきに?有名だった百樹園さんでこのツクバネウツギを初めて入手し、展示会でも飾ったことがあります。
(2011年撮影)
この樹はむやみに針金で作らず、基本はハサミで軸を作っていくほうが映える樹で、年数が経つと幹がウグイスカグラのように白くなり、そこも魅力のひとつと言えます。
この鉢は私が仲良くしてもらっていた先輩の柴崎さんの作った鉢で落款は「輝」。べらんめぇ調の自虐ユーモアを得意とし笑、決して偉ぶらず、控え目にやさしく、私の盆栽ライフを支えてくれた恩人。今頃あっちの世界でも樹を育ててそう。
このツクバネウツギという樹種自体はタイワンツクバネウツギとAbelia unifloraとの交配種だそう。大正時代に日本に入ったらしいですが、おそらくこの数十年都市化が進む中で丈夫で排気ガスにも強いという点から街道沿いの植栽として使われ、それを拝借して挿し木して豆盆栽に仕立てたのではと。
そういう私もこの樹は自宅付近の公園の植栽から挿し穂をいただいたものですね。この樹種を見たら、「あぁ、〇〇通り沿いに生えてるやつね」とニヤつきながら言うのが盆栽人の定形なのです。
私はこのツクバネウツギを私の先生の土屋さんから教わったのですが、その時の「アベリアって言うよりよりは、ツクバネウツギって言ったほうが情があって良いよね」という言い回しが印象深く、この記憶と共に、あるいはこの記憶を追って、この樹種を育てている気がします。
「植物を育てる」ということは単にその字面通りなだけでなく、場合によっては大切な記憶として育てている場合も多いのです。