■岩ヒバ Selaginella Tamariscina

 しばらく更新が滞りました。実はもう9月の展示会の開催内容を主催者として決めるために動かねばならず、この類のタスクが生活入り込んでくるともう時間的にブログやSNSまでなかなか手がまわせません。

 私たちの会は「東京支部小品盆栽フェスティバル」という名で、秋の展示会シーズン第1弾の展示会として毎年上野グリーンクラブにて開催していて、今年で45年目を迎えるのですが、コロナの関係で今年もまだ開催形式は未定です。会員さんにアンケートをとるなどした結果を参考にしてこれから開催形式を検討していきます。

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 さて、先日の東京支部の例会で草だけの席を飾ってたのしみました。今日はここからイワヒバを取りあげてみたいと思います。

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 イワヒバは岩檜葉と書いたり、時には巻柏と書いたりもするそうで、さらに岩松(イワマツ)と呼んだりもします。どれも岩についているヒバのような葉をした植物という意味合いなのでしょう。実際多くの情報が水はけの良い岩場に自生するといいますが、某先輩のお宅近くの小川縁にも生えていたというので、頑固そうな見た目のわりに以外と融通の利くヤツかも知れません。

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 植物としてはシダ植物になり、江戸時代からの古典園芸植物なのでやたら品種があるようです。ちなみにこのイワヒバは「牡丹冠」という品種。葉が短く、小さく仕立てるのに向いています。葉の色も今の時期は少し輝きがあってきれいな品種ですね。

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 こちらがイワヒバの親株。左が昔先輩からいただいた野生種のイワヒバ。右が牡丹冠の親株。ここから採った穂で芽挿しをします。

 ご覧のように、葉の長さと色ではっきりとした違いが出ていますね。

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 そうそう、イワヒバの脇に生えている葉はヒバリマサキという樹です。江戸時代中期に作出された古典品種だそうで、きもカワ系(Something that feels ugly and cute)の古典園芸植物繋がりの寄せ植えになっていますが、実はヒバリマサキの剪定枝が出た時にたまたまこの鉢の空いたスペースに目がとまっただけでなのです。ヒバリマサキは土に挿すと、いえ、挿さなくても湿気があると簡単に発根します。

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 ヒバリマサキは私が初めて日本小品盆栽協会の名品展に飾った時に使った思い出の樹です。

 ちなみに野生種のイワヒバでも持ち込み次第でかなり小さくすることができます。できるのですが、うちの野生種のイワヒバは最近少し元気になりすぎてしまいました。

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 本当はもっと小さくなるのですが、かなり元気になって葉を青々と広げています。自作の雪華模様の鉢に入れているところから、冬姿を飾るつもりでいるのがわかりますか?

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 古典園芸のように葉芸云々を楽しむのも良いのですが、盆栽ですから、席飾りにイワヒバを配すことで深山の岩場のイメージを醸し出て遊べます。

 そうやって、席飾りは複数のピースから連想してその盆栽が実際に生えている景色を想像して遊ぶことができる要素を持った遊びなんです。

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 いやいや、たいして派手な見所のないシダ植物だけでたくさんの画像データを使ってしまいました。でもね、盆栽ってひん曲がった幹を太らせてその芽数を誇る遊びなだけじゃないですよっと。そんな意味でもこういうマイナーな記事があってもいいのではと、つまらぬ男が申しております。