■地板 Jiita

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 以前、古い雑誌の中の座談会で、本当にこだわる盆栽屋さんは一度その場で飾って見せてからでないと樹を売らなかった、と読んだことがあります。古い盆栽園さんでも屋内に飾るスペースを用意しているところ、たまにありますよね。

 私はそこまで飾りにこだわるほうの人間ではありませんけれども、やはり自分で長く育てた樹を見ていただいたり、あるいはそれをどんな風ににていただくか思いを巡らせたり、それこそ順番が逆転して、こういう飾りをしてみたいからこういう樹を育て仕立てる、というような盆栽に対する熱意にもなるので、飾りというのは常に身近に意識しているものです。

 はい、時に誰もいないところでわっと声をあげて顔を塞ぎたくなるほど貧しい我がセンスは置いといて。

 盆栽を飾る時にはそのまま直で置かず、飾り棚や板など、必ず何か下に敷きます。正確には近代以降からなんだと思いますが。それより前は、土を使う盆栽を室内に持ち込むのは好まれない傾向があって、せいぜい縁側くらいまでだったそうです。国風展を美術館でやろうという運動も相当嫌がられたそうですね。盆栽も出世したものです。

 それはいいとして。盆栽の下に敷く板を「地板」(Jiita)と呼んでいます。外国のかたのために言えば、「地」がgroundで「板」がboardでしょうか。毎年展示会に参加する盆栽人なら、四角だったり、丸だったり、細工がしてあったり、大小様々、地板はたくさん持っていると思います。

 それで、そういったものはだいたいが職人さんが作ったものを買うわけですが、私が盆栽を習ったT屋さんなどは渋好みなところがありまして、いえ、関西の雅に対してやはり関東はわびさびというか、貧相で貧乏くさい美意識が性に合うのか、古い木造家屋の解体に立ち会った際にもらってきた雨戸の戸袋の板を地板としてずっと愛用しています。

 当然そうきたら、私もそれ欲しいと、入門したての私はそんな解体現場に出くわさないかと首を長くしてその日を待ったのです。それで、結局戸袋の板までは手に入りませんでしたが、ある日偶然、古い木造家屋の外壁板として使われていた杉板とは出会うことができました。

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 盆栽が小さくて、幹が細くて繊細だと、地板にもある程度の薄さが欲しかったりします。

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 外壁として風雨にさらされ続けたので、勝手に浮造り(うづくり)になっているというありがたい品。うーん、貧乏くさい。

 

 といわけで、板を奥から引っ張り出したついでに樹を飾っておきました。

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 細幹の雪柳。

 この樹は私の先生が手放したものを私が買い戻した樹です。私がこの樹を買うのを見た会の仲間が、「まことさんちにあっても全然違和感ないというか、普通にありそう」と漏らしていましたが、ま、そういうことです。

 完コピを目指して感覚を盗もうと四苦八苦しているうちに自分の居る場所が見えてくるというのは、案外どのジャンルにもあるような気がします。